今回は、海外FXの税金の計算方法を実例をもって丁寧に解説していきます。
海外FX税金計算その1.事前準備「損益を調査する」
海外FXの税金を計算する前にしなければならないことは
です。
儲けた金額に税金がかかるので「儲けを調べること」が海外FXの税金計算の第一歩となるのです。
XMの場合
1.会員ページの右側メニュー「マイ・取引履歴」

2.「マイ・取引履歴」で確定申告前年の期間を指定して「参照するボタン」をクリック
3.エクセルに貼り付けて「損益」を計算する
4.「マイ・取引履歴」での取引結果はPDFや画像データで保存する
注意点
※取引結果は、画像データやPDF、印刷によって保存しておきましょう。確定申告時には「損益報告書」が必要となります。
「損益報告書」とは
DMM FXの場合
日本国内のFX業者の場合は、確定申告用にわかりやすく「損益報告書」を出す機能が備わっているのですが、海外FX業者の場合は、世界中の顧客対応ですので「損益報告書」としての完成形でレポートが出てくるとは限りません。
そのため、取引結果は枚数が増えても、改ざんができない画像データ、PDFデータ、印刷して保存しておくことをおすすめします。
※過去の取引データが見れる期限があるので、早めにデータを出力しておきましょう。
海外FX業者によっては「レポートの期間が1年前までしか遡れない」ということもあります。サポートデスクに依頼すれば出してもらえますが、手間になるので、取引をしない大晦日になったら、1年分の損益レポートを出力しておくことをおすすめします。
※口座通貨に注意が必要です。
日本円口座なら、日本円での損益が見れますが・・・
米ドル口座なら、米ドルでの損益
ユーロ口座なら、ユーロでの損益
となります。
ドル口座を利用している場合
TTM(電信売買相場の仲値)
が基準となります。
TTM(電信売買相場の仲値)とは
みずほ銀行ウェブサイト外国為替公示相場テキストデータダウンロード
そう思うのも当然だと思いますが・・
正確には、全トレードの時点で円換算しなければなりません。
しかし、実務上はかなり難しいので「月の平均TTMなどで月ごとに計算すればいいよ。」という税理士さんもいるようです。
ここは自己責任になってしまうので、短縮する場合には、税務署、もしくは顧問税理士、顧問会計士に確認の上、実行しましょう。
クラウド系の会計ソフトを利用している場合は、自動的にドルを円換算する機能が備わっています。
例:freee
外貨での取引は、発生時のレートで円貨に換算して記帳します。また、期末に残った外貨建て残高は期末レートで換算し直し、差額を為替差損益として計上します。
詳細については、企業会計審議会の外貨建取引等会計処理基準、日本公認会計士協会の外貨建取引等の会計処理に関する実務指針などを確認するか、税理士・会計士など専門家へお問い合わせ下さい。
つまり、「取引日時点の仲値」で自動的に計算してくれるので、簡単に計算することができるということになります。
損益の調査は
- 海外FX業者ごと
- 海外FX口座ごと
に、トレードをしたすべての保有口座で個別に確認しなければなりません。
トレードをしたのにも関わらず、その口座の存在を忘れてしまって計算が抜けてしまうと「脱税」になってしまいます。注意しましょう。
Q.ボーナス・キャッシュバック、トレードコンテストの賞金は、どう計算すれば良いの?
海外FXでは、入金ボーナスや取引におけるキャッシュバックなどのサービスがあります。
基本的には
- 出金できるボーナス・キャッシュバック、トレードコンテストの賞金は、雑所得になるので、損益に含めて考える
- 出金できない、証拠金としてしか使えないボーナスは、損益に含めない
と考えれば良いでしょう。
ボーナスにはいろいろな種類があります。
- 出金できるボーナス → 雑所得
- 出金できないボーナス → 所得ではない
- 出金条件があるボーナスで出金条件を満たしている分 → 雑所得
- 出金条件があるボーナスで出金条件を満たしていない分 → 所得ではない
と考えられます。
Q.トレードコンテストの賞品は、どう計算すれば良いの?
海外FXでは、トレードコンテストで「ワールドカップのチケット」「高級車」などが当たるものがあります。これらの賞品も、一時所得として納税の対象になります。
トレードコンテストの賞品は「一時所得」です。海外FXの損益の「雑所得」とは別ものになります。
一時所得は、その所得金額の1/2に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後納める税額を計算します。
高級車が小売価格500万円の場合
- 時価 = 500万円 × 60% =300万円
- 一時所得 = 300万円 - 0円 - 50万円 = 250万円
- 納税額 = 250万円 / 2 = 125万円
となります。
また、賞品に税金がかかることを知らない方も多く、そのままにしていると脱税になってしまうので忘れずに納税しましょう
海外FX税金計算その2.事前準備「経費を調査する」
年間損益が計算できて、損益の取引データを保存したら、次にやることは「支出」の確認です。
- 領収書
- 明細書
がFX取引を行うことにかかった経費等を証明するものとして必要経費を申告する際に必要になります。
サラリーマンでも、個人事業主でも、会社に経費申請するときには「領収書」が必要なことは理解しているかと思います。
- FXをするパソコン
- FXをする場所の事務所費用(自宅の場合は家賃の一部しか認められない可能性があります。)
- Wifi
- 携帯電話
- 光回線
- セミナー代
- セミナーなどに参加するための交通費
- 書籍代
- 情報交換のための接待交際費
- 机やいすなどの家具
- PC周辺機器
・・・
など、様々なものが海外FXトレードの経費になるので、「領収書」「明細書」をかき集める必要があります。
「これは海外FXトレードの経費になるのかどうか?」不明な支払いがあった場合には、顧問税理士や顧問会計士に相談することをおすすめします。
税務署に聞いても回答はもらえますが、税務署は少しでも税金を増やしたい立場の人ですので、顧問税理士や顧問会計士よりも、「それは認められません。」という回答になることが多いです。
顧問税理士や顧問会計士は、過去の経験則から、「そのぐらいなら大丈夫ですよ。」と回答してくれる可能性が高いのです。税務署の調査が入っても、結局戦ってくれるのは顧問税理士や顧問会計士ですので、そのときに論理的に対抗できれば良いだけなのです。
ちなみに顧問税理士や顧問会計士によっては
- 「レシート」もOK
- 「クレジットカードの明細書」もOK
という方も増えてきているようです。
海外FX税金計算その3.納税の必要性をチェックする
給与所得者で確定申告が必要な人
1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人。
となっています。
逆に言えば
給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超えない人
は、確定申告をする必要がないのです。
会社員でFXトレードのみの副収入を得ている人の場合は
ということになります。
所得は経費を除いたものですから
海外FXトレードで年間30万円の収益があったとしても、必要経費として書籍購入が11万円あれば、所得は19万円という計算になるので、確定申告をする必要はなくなります。
収入と所得は違うので注意が必要です。
海外FX税金計算その4.税金を計算する
ここは飛ばしても構いません。
国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作成すれば、自動的に税金は計算してくれるので、わざわざ自分で計算する必要はありません。
海外FXの課税の仕組みは
総合課税
が採用されています。
そのため、海外FXの収益だけで税金を計算することはできません。
給与所得、不動産所得、事業所得、譲渡所得、一時所得、配当などと合算して、所得税や住民税が計算される仕組みとなっています。
税金計算の仕組み
出典:東京税理士会
税率
所得税の税率/2023年
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
復興特別所得税/2023年
所得税額 × 2.1%
住民税の税率/2023年
市区町村民税 | 課税される所得金額×6% | 均等割り(自治体ごとに違う) |
都道府県民税 | 課税される所得金額×4% | 均等割り(自治体ごとに違う) |
海外FXの税金計算例
- 給与所得:520万円
- 海外FXの収入:120万円(経費20万円)
所得税の計算
所得金額の計算
給与収入の額 = 5,200,000円
給与所得控除 = 1,580,000円
給与所得金額 = 3,620,000円
海外FXの所得金額の計算
海外FX所得金額 = 1,200,000円 - 200,000円 = 1,000,000円
控除額の計算
社会保険料等 = 280,000円
生命保険料控除 = 40,000円
扶養控除 = 380,000円(一般扶養親族のうち年齢16歳以上の者1人につき38万円)
基礎控除 = 380,000円
控除額合計 = 1,080,000円
課税所得金額の計算
課税所得金額
= 3,620,000円(給与所得) + 1,000,000円(海外FX取得) - 1,080,000円(控除額)
= 3,540,000円
所得税の計算
3,540,000円 × 20%(税率) - 427,500円(控除額) = 280,500円
復興特別所得税の計算
280,500円 × 2.1%(税率) = 5,890円
所得税 + 復興特別所得税 = 286,390円
住民税の計算
控除額を出しなおす(※所得税と住民税では控除額が異なるため)
社会保険料等 = 280,000円
生命保険料控除 = 25,000円
扶養控除 = 330,000円(一般扶養親族のうち年齢16歳以上の者1人につき33万円)
基礎控除 = 330,000円
控除額合計 = 965,000円
課税所得金額
= 3,620,000円(給与所得) + 1,000,000円(海外FX取得) - 965,000円(控除額)
= 3,655,000円
調整控除額
11万5000円(人的控除額の差の合計額) - (3,655,000円 - 2,000,000円) × 5%
→ マイナスになってしまうので調整控除額は2,500円
住民税 = 3,655,000円 × 10% + 4,000円(均等割り) - 2,500円 = 359,000円
考察
すべてを合算して税金が決まるため、一概には言えませんが、上記の計算例の場合は
海外FXの税金だけとみると
所得税:20% - 海外FXの収入分の控除 + 復興特別所得税
住民税:10% + 均等割り - 調整控除額
概ね30%の税負担
となるのです。
海外FX税金計算その5.確定申告を行う
会社員の方は「給与」を入力します。
源泉徴収表の通りに入力していくだけですので難しいものではありません。
海外FXの所得を「雑(その他)」に入力します。
個人年金ではないので「上記以外(報酬等)」の「入力する」ボタンをクリックします。
海外FX業者ごとに1件ずつ入力していきます。
例:XMの場合
注意が必要なのは海外FX業者は「○○forex」となっていても、これが会社名ではないことが多いということです。サービスブランド名と運営会社名は違うということです。
XMの場合も、正式な会社名はTrading Point (Seychelles) Limitedです。本社の住所などがわからない方は直接サポートに聞いてみると良いでしょう。サイト上に記載されていない海外FX業者もあります。ただし、英文の正式名称を記載しようとしても長すぎてエラーになることも多々あります。「XM」と書いてあっても、とくに税務署から指摘されることはありませんので気にならない方は略所や住所の一部だけでも問題ありません。
- 源泉徴収票による給与所得の入力
- 海外FXの収益の入力
が完了すると、ほとんど自動的に税金の計算が行われ
- 納める税金
- 還付される税金
が表示されます。
- ただしく入力されていない箇所がないかどうか?
- 給与と海外FX以外の売上の漏れ
- 控除の漏れ
をチェックしましょう。
まとめ
- 海外FXでのトレード損益を確認する
- 経費を確認する
- 確定申告の必要性をチェックする
- 税金を計算する
- 確定申告コーナーで自動で税金を計算する
上記の手順で、海外FXにおける税金の計算ができたはずです。そのまま確定申告書をダウンロードして、必要書類を添付し、税務署に郵送すれば確定申告が完了します。