
ハイレバレッジであり、追証もなく、ボーナスが豊富でメリットが多い海外FXですが、もっとも大きなデメリットは「税金が高いこと」と言っていいでしょう。今回は、海外FXで発生する税金を法人化することで節税する方法を解説します。
目次
海外FXトレーダーが法人化すると税金はどうなるの?

海外FXの税金は
雑所得としての総合課税
です。
所得税の税率/2019年
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
復興特別所得税/2019年
所得税額 × 2.1%
住民税の税率/2019年
市区町村民税 課税される所得金額×6% 均等割り(自治体ごとに違う)
都道府県民税 課税される所得金額×4% 均等割り(自治体ごとに違う)
つまり、
最大で所得の55%が税金になる
ことを意味します。
法人を設立した場合の海外FXによる税金は
法人を設立すれば
となります。
法人の税率は
法人の実効税率/2019年
外形標準課税不適用法人(標準税率) ※資本金1億円未満の中小企業
税金 | 税率 |
---|---|
法人税率 | 23.20% |
住民税(都民税法人税割) | 12.90% |
地方法人税 | 4.40% |
事業税率(標準税率) | 6.70% |
地方法人特別税率 | 43.20% |
法定実効税率(%) | 33.59% |
中小企業の法人の実効税率は、33.59%
になるのです。


法人設立時と個人での支払い税額シミュレーション

海外FX専業トレーダーで収入1,000万円(経費なしとした場合)
個人の場合
所得:10,000,000円
所得税:33.0%
控除額:1,536,000円
基礎控除:380,000円
所得税 = ( 10,000,000円 - 380,000円 ) × 33% - 1,536,000円 = 1,638,600円
復興税率 = 1,638,600円 × 2.1% = 34,411円
住民税 = ( 10,000,000円 - 380,000円 ) × 10% = 972,000円
合計:2,645,011円
手取り:7,354,989円
法人の場合
当期利益:10,000,000円
法人税:8,000,000円 × 15% + 2,000,000円 × 23.2% = 1,664,000円
地方法人税:1,664,000円 × 4.4% = 73,216円
法人住民税:70,000円 + 1,664,000円 × 12.9% = 284,656円
法人事業税:10,000,000円 × 6.7% = 670,000円
地方法人特別税::10,000,000円 × 2.894% = 289,400円
合計:2,981,272円
法人の内部留保:7,018,728円


海外FXトレーダーが法人化するメリット

メリットその1.法人なら経費で利益を薄められる!
個人でFXトレードの経費を使おうとしても、それには限界があります。
- 書籍代
- 通信費
- セミナー費用
- パソコン費用
- トレード用の家具費用
・・・
ぐらいが関の山です。
しかし、法人であれば
使える経費の幅が格段に広がります。
- 接待交際費
- 住居を役員社宅として経費計上(100%の計上はできないが50%以下にはなる)
- 出張(海外旅行)の経費
- 交通費
- 生命保険の掛け金
- 退職金
・・・
事業に使ったことを説明できれば、ある程度の支払いは、すべて「経費」になるのです。
FXトレードのみの会社で接待交際費の説明がつかないようであれば、新規事業で制作会社でもやっているようにしてしまえば良いのです。法人であれば、複数の事業をやっていることは普通のことですので、打ち合わせが必要な業務を入れ込めば、多くの会食が打ち合わせや営業・接待の経費として計上できるのです。
メリットその2.家族に給与支払いができる
個人事業の場合は、基本的には家族に対して給与支払いをするためには
- 同一生計
- 15才以上
- 事業に専従している
- 労務の対価として相当である
- 予め税務署に届け出る
などの条件をクリアしていなければなりません。
また、この場合、配偶者控除・扶養控除は対象外になってしまいます。
法人であれば、家族に対して支払いをしても、すべて経費になります。
「FXトレードのトレードノートを記録する役務」「経理作業」を奥さんにやらせれば常勤役員にできるので、支払った給与を経費として計上することができるのです。
非常勤役員とすれば、ほぼ仕事をしなくても、給料を支払うことができます。
前述した通りで、所得税というのは
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
「累進課税」ですから
- 1,000万円を1人に給与を出す(税率:33%)
よりも
- 500万円を2人に給与を出す(税率:20%)
方が、何倍も税金が安くなるのです。
メリットその3.給与所得控除が使える
個人事業主の場合は、給与所得控除はありませんので、すべての方に共通するのは「基礎控除:38万円」のみとなります。
法人化して給与という形で、代表取締役が利益を受け取れば「給与所得控除」が使えます。
「給与所得控除」
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40%(650,000円に満たない場合には650,000円) |
1,800,000円超~3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超~6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超~10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
という大きな控除が受けられて、ここでも節税になるのです。
メリットその4.最大9年間損失繰越ができる
国内FXであれば、損失は3年間繰り越すことができます。
海外FXの場合は、損失繰越はできません。
メリットその5.退職金を受け取ることができる
- 退職金は、半分は税金から控除されるので税金がかからない
- 退職金は、分離課税である
というメリットがあります。

メリットその6.社会保険に入ることができる
これはデメリットととらえる方もいますが
- 個人事業主 → 国民健康保険、国民年金
- 法人 → 厚生年金、健康保険
と違いがあるため、保険料は高くなるものの、将来受け取れる年金額などが増える「社会保険」に加入することができます。
メリットその7.出張手当を受け取ることができる
法人の場合、出張をすれば、その分出張手当を出すことが可能です。
海外FXトレーダーが法人化するデメリット

デメリットその1.設立費用が発生する
会社を設立するためには
20万円~25万円
程度の初期費用が発生します。
定款認証や登録免許税などのコストです。
その2.法人住民税7万円は赤字でも発生する
法人税の多くは、利益に対して課税されるので、赤字の場合は税額は0円になります。
一つだけ例外があり、法人住民税の7万円分は、赤字でも支払う必要が出てくるのです。
デメリットその3.税理士、会計事務所、弁護士、社労士などを利用するコストが発生する
自分でできる人は利用する必要はありませんが、基本的には「税理士」「会計事務所」ぐらいは、決算のときに使うことが多いと思います。
「税理士」「会計事務所」の報酬は、コスト高となってしまいます。
デメリットその4.海外FXの口座開設の手間が増える
海外FXの法人口座開設は、個人の口座開設よりも、様々書類が必要になってきます。
手間がかかるのは間違えありません。
例
法人のお客様は必要書類をご準備いただきます。下記の書類(交渉人もしくは弁護士によって原本のコピー本紙であることを証明されたもの)をご用意ください。
- A.本定款および付属約款
- B.法人設立認可証(ただし設立証書の日付が12 か月以上前のものである場合は、過去6 ヶ月以内に発行された会社存続証明書が必要)
- C.登録住所証明書
- D.役員および秘書一覧書 E. 株式名簿
- F.在職証明書(適用される場合)
- G.取引口座を開設することを承認し、承認された人物が申込書に署名して口座を運営することを任命し、投機商品に投資することへの承認に言及した取締役会決議/議事録
- H.権限者の認証済み/公証済み/正式なコピーのパスポートまたはID、および住所確認書類(例:公共料金の請求書など)
- I.会社の全ての株主/所有者のパスポート/ID および住所確認書類(例:公共料金の請求書など)
デメリットその5.法人口座を受け付けている海外FX業者は限られてくる
以前は、XM(エックスエム)は法人口座を受け付けていましたが、2019年時点では、法人口座の受付を停止しているようです。

約定力 | 99.35%を1秒以内に約定 執行率100% リクオート・注文拒否なし |
信託保全 分別管理 | 2万EURまで信託保全(キプロス口座) 保険にて上限あり一部信託保全(セーシェル口座) |
ロスカットレベル証拠金維持率 | 20%以下 |
取引システム | MT4 MT4ウェブトレーダー MT5 MT5ウェブトレーダー |
通貨ペア数 | 57通貨ペア |
口座通貨 | USD,EUR,JPY |
AXIORYのように法人口座を受け付けている海外FX業者もあります。

口座の種類 | ナノスプレッド口座/MT4/ECN |
取引手数料 (pips換算:片道) | 0.30 |
最小スプレッド 米ドル/円 | 0.10 |
平均スプレッド 米ドル/円 | 0.60 |
最大レバレッジ | 400倍(~10万ドル) 300倍(~20万ドル) 200倍(20万ドル~) |
約定力 | 約定率:99.97% スリッページ平均:0.039pips 約定スピード:202.42m/sec |
最低入金額 | 2万円相当 |
年間収益がいくらを超えたら海外FXトレーダーは法人化すべきでしょうか?

一般的にFXトレードに関係ない状態で
個人事業主の法人成りの目安は
年収600万円
とされています。
筆者の見解ですと
海外FXトレーダーの場合は
- 個人だと経費にできるものが少ない
- 損益繰越が重要になる
という特徴があるため、もう少し収益が小さくても、法人化を検討してよいのではないかと考えます。

個人のままでもできる海外FXの節税方法
海外法人である必要はありませんか?

国によっては、海外法人の方が日本よりも税率が低いのですが、海外法人が給与を日本在住の経営者に支払う場合には、日本の税務署に所得税、住民税などを納税する必要があるのです。
収益額が年間数5千万円を超えるようであれば
- 税率の低い海外法人を設立する
- 海外に移住する
ということを検討して、大きく節税することが可能ですが
それ以下であれば、日本で法人を設立しても、十分に節税できると言えます。
まとめ
海外FXトレーダーが法人化するメリットには
- メリットその1.法人なら経費で利益を薄められる!
- メリットその2.家族に給与支払いができる
- メリットその3.給与所得控除が使える
- メリットその4.最大9年間損失繰越ができる
- メリットその5.退職金を受け取ることができる
- メリットその6.社会保険に入ることができる
- メリットその7.出張手当を受け取ることができる
海外FXトレーダーが法人化するデメリットには
- デメリットその1.設立費用が発生する
- デメリットその2.法人住民税7万円は赤字でも発生する
- デメリットその3.税理士、会計事務所、弁護士、社労士などを利用するコストが発生する
- デメリットその4.海外FXの口座開設の手間が増える
- デメリットその5.法人口座を受け付けている海外FX業者は限られてくる
というものがあります。

「海外FXの税金を抑えるためにはどうすればよいの?」
・・・