海外FXは、国内FXと比較して、税金面で不利になります。高い税金を支払わなければならない海外FXでは、より「節税」が重要なポイントとなります。今回は、「両建て」節税法について解説します。
海外FXの税金・課税の特徴
FXトレードの税金は
です。
国内FXの税金は
申告分離課税が採用されている
- 給料所得など他の所得とは分離されて、FXトレード(「先物取引に係る雑所得等」)の「利益」に対して、課税される
税額は20%
- 所得税:15.0%
- 地方税:5.0%
合計:20.0%
損失繰越
- 損失の金額を翌年以後3年間繰り越しすることができる
損益通算
現物先物取引、現金決済型先物取引、商品指数先物取引、商品オプション取引、商品の実物取引のオプション取引などの損益と「損益通算」が可能です。
日経225先物取引、日経225先物オプション取引、商品先物取引、取引所外国為替証拠金取引(くりっく365)などが該当します。
海外FXの税金は
「雑所得」として、総合課税が採用されている
海外FXの税金は「雑所得」として、「総合課税」が採用されています。
「総合課税」とは
を言います。
海外FXで得た利益というのは、給与などの所得と合算して、課税されるのです。
支払うべき税金は、所得税と住民税
支払うべき税金は
- 所得税
- 住民税
の2種類です。
税率は、累進課税が採用
税率は、所得額が大きくなればなるほど税率が上がる「累進課税」が採用されています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
「損益通算」は、「総合課税」の中での損益通算が可能
雑所得の範囲内での損益の通算は可能です。
まとめ
「海外FX」と「国内FX」を比較すると下記のようになります。
項目 | 国内FX | 海外FX | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税制 | 申告分離課税 | 総合課税 | ||||||||||||||||||||||||
他の収入との兼ね合い | FXの収入は他の収入とは別に課税されます。 | 他の収入と合算して課税されます。 | ||||||||||||||||||||||||
税率 | 一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) | 所得税 = 課税所得(経費・控除を除いた収入) × 下記税率 - 控除額
住民税 = 課税所得(経費・控除を除いた収入) × 10% + 住民税(均等割り) 復興特別所得税 = 所得税額に2.1%の税率を乗じた金額 |
||||||||||||||||||||||||
損益通算 | 国内FXはもちろん先物やオプション取引などと損益通算が可能 | 海外FX同士での損益通算が可能。 | ||||||||||||||||||||||||
損失の繰り越し | 損益通算をしても損失が残った場合、翌年以降3年間にわたって利益から損失を引くことができる | できない |
見てわかる通りで
- 税率面
- 税制優遇面(損益通算、損失の繰り越し)
で、海外FXの方が国内FXよりも、大きく不利になってしまうのです。
注意
「節税」は、あくまでも合法なものです。『海外FX業者だから、申告しない。』というのは「節税」ではなく、「脱税」ですので、絶対にやってはいけないことです。
「両建て」節税法とは?
「両建て」とは
を言います。
同時に同じ取引量のポジションを「両建て」で持てば
という特徴があります。(スプレッド分、取引手数料分、スワップポイント差分の損失は若干発生します。)
未決済ポジションは、課税対象ではない!
今回の節税方法で重要になるのは
ということです。
DMM FX
未決済ポジションは確定申告する必要はありますか?
【DMM FX】【DMM CFD】において、未決済ポジションは損益を確定していない(反対売買を行っていない)ため、課税対象外です。
「ポジション決済(反対売買)」もしくは「スワップ受取」を行った場合の決済損益・スワップポイントは課税対象となります。ただし、法人口座においては保有資産も課税対象になることがあります。
詳しくは最寄りの税務署にご相談ください。
FXプライム
未決済ポジションの評価益も課税の対象ですか。(『選べる外貨』『ちょいトレFX』)
回答
1月1日から12月31日(※)までの期間に確定した為替損益・スワップポイント損益の合計が確定申告の課税対象となります。
未決済ポジションの評価益については課税対象外です。※当社の場合は、1月1日(午前7時)から翌年1月1日(午前6時59分)までの取引が対象期間です。
外為どっとこむ
未決済ポジションは課税の対象となりますか?(法人)
法人の場合は、事業年度の末日において未決済の損益を課税所得計算に算入しなければならないため、同日時点の評価損益による確定申告が必要です。したがって法人のお客様に限り、未決済ポジションの評価益(含み益)は課税の対象となります。
となっています。
つまり、
法人の場合:未決済ポジションは課税対象になる
ということがわかります。
個人がFXトレードをしている場合、未決済ポジションにどれだけ「含み益」があったとしても、決済されていなければ課税の対象にはならないのです。
未決済ポジションが課税対象にはならないのですから
ということがわかります。
これを活用するのが「両建て節税法」なのです。
両建て節税法
両建て節税法その1.含み益のある未決済ポジションがある場合
含み益のある未決済ポジションがある場合、年内に決済してしまえば、利益が確定して、その分、税金が高くなってしまいます。
手順
- 含み益のある未決済ポジションと逆方向に同額のポジションを立てる
- 年を越したら、両方とも決済する
これだけです。
年末に両建ての状況にしておけば、為替変動があっても、損益は変わりません。
- 「買い」ポジション:+100万円の含み益
の状態で、「両建て」にするのですから
為替が上昇しても
- 「買い」ポジション:+120万円の含み益
- 「売り」ポジション:-20万円の含み損
合計:+100万円の含み益
為替が下降しても
- 「買い」ポジション:+80万円の含み益
- 「売り」ポジション:+20万円の含み益
合計:+100万円の含み益
と損益の合計を変えずに、未決済ポジションを維持できるのです。
両建て節税法その2.含み損のある未決済ポジションがある場合
含み益のある未決済ポジションがある場合で、かつその年の損益が赤字である場合、年内に決済してしまえば、損失が確定して、赤字が大きくなるだけで、税金が発生しないのは変わりません。
本来は海外FXではできない「損失繰越」をするために「両建て」を利用します。
手順
- 含み損のある未決済ポジションと逆方向に同額のポジションを立てる
- 年を越したら、両方とも決済する
これだけです。
年末に両建ての状況にしておけば
為替変動があっても、損益は変わりません。
- 「買い」ポジション:-100万円の含み損
の状態で、「両建て」にするのですから
為替が上昇しても
- 「買い」ポジション:-100万円の含み損
- 「売り」ポジション:+20万円の含み益
合計:-100万円の含み損
為替が下降しても
- 「買い」ポジション:-80万円の含み損
- 「売り」ポジション:-20万円の含み損
合計:-100万円の含み損
と損益の合計を変えずに、未決済ポジションを維持できるのです。
両建て節税法その3.含み益、含み損のある未決済ポジションがない場合
という投資家の方が圧倒的に多いと思います。
このようなケースでも、「両建て節税法」は有効です。
手順
- 12月1日に年末までの見込み損益額に応じて、両建てポジションを持つ
- 12月31日に損失が出ている方のポジションを決済する
- 1月2日に利益が出ている方のポジションを決済する
どういうことかというと
12月1日の段階で、100万円の利益が出ていた場合
12月の1カ月間の為替変動で、100万円以上の損失が出るようなポジションを持ちます。
1円は値動きすると想定すれば、100万通貨(海外FXなら10ロット)のポジションを持ちます。
- 買い:100万通貨(損益プラスマイナスゼロ)
- 売り:100万通貨(損益プラスマイナスゼロ)
12月31日の段階で、円高方向に1円上昇していた場合
- 買い:100万通貨 → +100万円
- 売り:100万通貨 → -100万円
の状態になります。
ここで
- 買い:100万通貨 → +100万円
- 売り:100万通貨 → -100万円 :決済
すれば、
1年間の利益:+100万円、12月31日に決済した損失:-100万円が相殺されて
- 利益:0円 → 税金:0円
となります。
1月2日になって、残りの
- 買い:100万通貨 → +100万円 :決済
すれば
ピッタリである必要はありません。
本当は、1円の値動きを想定していたが、2円動いてしまった場合
- 買い:100万通貨 → +200万円
- 売り:100万通貨 → -200万円
こうなるので
- 買い:100万通貨 → +200万円
- 売り:100万通貨 → -100万円 :100万円分だけ決済
とすれば、良いのです。
値動きが予想より少ないと、どうすることもできないため、ある程度の通貨量を保有する必要があります。
海外FXの場合は「累進課税」が採用されています。
利益額が小さければ小さいほど、税率が低くなる
仕組みです。
つまり、
- 2020年 利益額:+2000万円 → 40%(控除を想定しない場合)
- 2021年 利益額:-1000万円 → 0%(控除を想定しない場合)
- 2023年 利益額:+500万円 → 20%(控除を想定しない場合)
という投資家よりも
- 2020年 利益額:+500万円 → 20%(控除を想定しない場合)
- 2021年 利益額:+500万円 → 20%(控除を想定しない場合)
- 2023年 利益額:+500万円 → 20%(控除を想定しない場合)
の方が、税額が少額になるのです。
両建て節税法の注意点
注意点その1.スプレッド分、取引手数料分、スワップ差分のコストが発生する
というのは事実ですが
FXトレードには「スプレッド」「取引手数料」があるため、完全にプラスマイナスゼロにはなりません。
- スプレッド(取引手数料)差分の損失が発生する
のです。
また、「スワップ金利」も、一般的に「買い」と「売り」は、プラスマイナスが同じスワップ金利になりそうなものですが、多くの場合は、プラスのスワップ金利と、マイナスのスワップ金利には、差があり、その差分は損失となって乗っかってきます。
注意点その2.証拠金に注意が必要!
「両建て」と「証拠金」の関係は
- 「両建て」をすると相殺されて証拠金が不要になるFX業者
- 「両建て」をすると片方分の証拠金が必要になるFX業者
- 「両建て」をすると「買い」「売り」両方の証拠金が必要になるFX業者
の3パターンがあります。
海外FX業者の場合は、
MT4・MT5の中で両建てするため、含み損と含み益が相殺されて、その差額分の証拠金が必要になります。
これであれば、大きな必要証拠金が必要なわけではありません、元々、海外FX業者はレバレッジも、400倍~500倍が平均とかなり大きいため、強制ロスカットになる可能性も少ないでしょう。
ただし、
- 同じ海外FX業者で別口座での両建て
- 違う海外FX業者での両建て
を行う場合には、「買い」「売り」の両方の証拠金が必要になり、2倍の証拠金が必要になります。
注意点その3.年末をまたぐ場合は、為替変動による損失が出る可能性がある!
年末に未決済ポジションの片方を決済して
年明けに残りの未決済ポジションを決済する形の「両建て節税法」の場合
12月31日~1月2日の間の為替変動は、片方のポジションしかないため為替変動の影響を受けます。
注意点その4.法人・法人口座ではこの方法は使えない
前述した通りで
法人の場合は、事業年度の末日において未決済の損益を課税所得計算に算入しなければならないため、同日時点の評価損益による確定申告が必要です。したがって法人のお客様に限り、未決済ポジションの評価益(含み益)は課税の対象となります。
とある通りで
法人は、含み益(含み損)もきちんと評価して確定申告する必要があります。
つまり、法人の場合「両建て節税法」は利用できないのです。
その他の海外FX税金の節税方法はこちら
まとめ
「両建て節税法」は
- 個人であれば未決済ポジションは課税対象にならない
- 両建てをすれば、為替変動の影響を受けない
ということを利用して
- その年の損益をコントロールする
節税方法です。
「両建てを使った節税が良いと聞いたのですが、どうやってやれば良いでしょうか?」
「両建てをすると、どうして節税になるのですか?」