イタリアのEU離脱・ユーロ離脱の可能性も!ユーロ全面安の背景と今後のFX・為替相場予想

イタリアの国内情勢が混乱に陥っています。その影響を受けて、ユーロも全面安の状況です。「イタリアで何が起きているのか?」「ユーロにはどのような影響があるのか?」「今後のFX為替相場の予想」について解説します。

ユーロ全面安の現状

ユーロ全面安の現状

ユーロ/米ドル 日足

ユーロ/米ドル 日足

2018/4/20:1.22881
2018/5/30:1.15367

6.1%のユーロ安

ユーロ/円 日足

ユーロ/円 日足

2018/4/26:132.305
2018/5/30:125.464

5.2%のユーロ安

ユーロ/豪ドル 日足

ユーロ/豪ドル 日足

2018/4/26:1.60771
2018/5/30:1.53691

4.4%のユーロ安

ユーロ/英ポンド 日足

ユーロ/英ポンド 日足

あきらかなユーロ安にはなっていない

  • ユーロ/米ドル
  • ユーロ/円
  • ユーロ/豪ドル

→ 大幅なユーロ安

  • ユーロ/英ポンド

→ あきらかなユーロ安にはなっていない

というのがユーロを取り巻く為替状況です。

基本的には

ユーロの全面安

といった展開です。

ただし、英ポンドは、イギリスのEU離脱(ブレグジット)があるものの、まだ交渉が続いているため、ユーロに引っ張られる分、ユーロ安にはなっていない状況です。

ユーロ安と同時に英ポンドも、通貨安に傾いているという状況にあります。

英ポンド/米ドル 日足

英ポンド/米ドル 日足

英ポンド/円 日足

英ポンド/円 日足
man
なぜ、ユーロが全面安になっているのでしょうか?
teacher
この理由は、イタリア総選挙による「反EU/反ユーロ連立政権」の誕生が要因となっています。

イタリア総選挙による「反EU/反ユーロ連立政権」の誕生

イタリア総選挙による「反EU/反ユーロ連立政権」の誕生

2018年3月4日:イタリア総選挙

がありました。

この結果、中道左派連合の与党「民主党」が後退し、過半数を超える勢力が出てきませんでした。

過半数を超える勢力が出てこない場合は、連立政権を目指すために、各政党が交渉に入るのですが、なかなか連立協議がまとまらず、約11週も、政治的空白の状況が生まれてしまったのです。

2018年5月18日:「五つ星運動」「同盟」の連立政党が誕生

  • 総選挙で32%の得票率を得た反エリートの「五つ星運動」
  • 総選挙で18%の得票率を得た反移民を掲げる極右政党「同盟」

が連立合意をし、連立政権を誕生させました

32% + 18% = 50%

とかろうじて、過半数を超える連立政権です。

どちらもポピュリズムを掲げる政党です。

ポピュリズムとは
大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢のこと

を言います。

ポピュリズム(ポピュリスト)の代表格は、最近で言えば「トランプ大統領」です。

  • 大規模な所得税減税
  • 大規模な法人税減税
  • 貿易赤字の解消
  • 移民の排除
  • 医療保険制度改革の撤廃
    ・・・

国民から見れば「耳障りの良い」政策が並んでいます。

man
「税金も安くなるし、移民がいなくなれば仕事が増える。」
「貿易赤字を押し付けてくる相手(中国や日本)はやっつけろ!」

と、過激な言葉を使い、アメを与えながら、大衆に迎合するのが「ポピュリズム」です。

「トランプ大統領」の誕生によって、米国の経済が好調になるのと同時位に、世界的に「ポピュリズム」の台頭が目立つようになってきました。

イタリアでも、「ポピュリズム」を掲げる「五つ星運動」「同盟」の2政党が票を伸ばしたのです。

「五つ星運動」
  • 雇用制度の安定化
  • EU(欧州連合)離脱、欧州統合への反対
  • 政治腐敗への不信と派閥・政党主義の政界構造への反対
  • 環境主義

などを掲げる政党

「同盟」
  • 元「北部同盟」
  • 右派ポピュリズム
  • 移民排斥
  • 反EU

などを掲げる政党

どちらも、「ポピュリズム」を掲げていて、今回のイタリア総選挙でも

  • 大規模な所得税減税
  • 大規模な法人税減税
  • 失業者らへの最低所得保障
  • 年金支給年齢の引き上げ撤回
  • 不法移民の強制送還
  • EUの対ロシア制裁解除
    ・・・

と、トランブ大統領に負けないぐらい、大衆に迎合する「バラマキ政策」を掲げ、票を集めたのです。

これらのバラマキ政策は、大きな支出を伴いますが、財源に対する言及はほとんどなく、実現性の意味では不透明なものと言えます。

man
「でも、トランプ大統領のようなポピュリズムの政権誕生だけなら、大きな問題にはならないのでは?」
teacher
単独国家であれば、ポピュリズムの政権誕生でも、大きな問題はないのですが、EU(欧州連合)という枠組みが大きな障壁となってしまうのです。

次期首相をめぐるゴタゴタが続く

次期首相をめぐるゴタゴタが続く

単独政権であれば、党首が首相になることが多いのですが・・・

それほど得票率に差がない連立政権だったため、「五つ星運動」「同盟」の党首が牽制しあい、なかなか次期首相候補を擁立できなかったのです。結果、妥協する形で両党は、政治経験のない法学者のジュセッペ・コンテ氏を首相候補に抜てきしました。

2018年5月23日:セルジオ・マッタレッラ大統領はジュセッペ・コンテ氏を次期首相に指名

ここまでは良かったのですが・・・

ジュセッペ・コンテ氏が次期首相として、閣僚人事案(組閣案)をセルジオ・マッタレッラ大統領に提案しました。

しかし、セルジオ・マッタレッラ大統領は、ジュセッペ・コンテ氏が提示した閣僚人事案(組閣案)の中で、「パオロ・サボーナ氏」の経済相の就任を拒否したのです。

イタリアの法律では、大統領は閣僚の任命を拒否する権利を持ちます。セルジオ・マッタレッラ大統領が、パオロ・サボーナ氏の任命を拒否すること自体には問題はありません。

パオロ・サボーナ氏

82歳:エコノミスト

  • 1990年代に工業大臣を歴任
  • イタリア金融業界では著名人
  • 緊縮財政の反対派
  • 政府のEUへの拠出金案に反対

パオロ・サボーナ氏は、イタリア日刊紙「La Stampa」で

man
「イタリアはユーロから離脱する準備を始めるべきだ」

と語る、「反ユーロ/反EU」派の急先鋒なのです。

「反ユーロ/反EU」を懸念したセルジオ・マッタレッラ大統領は、ジュセッペ・コンテ氏が提示した閣僚人事案(組閣案)を拒否したのです。

結果として、ジュセッペ・コンテ氏は

man
「人事権もないのであれば、首相なんてやってらんないよ。俺辞めるわ。」

2018年5月27日:ジュセッペ・コンテ氏は首相指名を返上

したのです。

セルジオ・マッタレッラ大統領の判断は、「反ユーロ/反EU」を掲げる「五つ星運動」「同盟」の両政党にとっては、正当な権利とは言っても、全く認められるものではなく

「五つ星運動」のディ・マイオ党首

「今晩以降、この国の制度や法を信じるのは本当に難しくなる」
「受け入れられない」
「これは前例なき制度の破壊だ」

として、大統領の弾劾を要求しました。

「同盟」のマッテオ・サルビーニ書記長

「民主主義では、もし我々がまだ民主主義の下にいるのならだが、やることはただ一つ、イタリア人に自らの意見を言わせることだ」

と、再選挙を要求しました。

どちらにしても、大きな反発を招いてしまったのです。

これは、政党だけの反発ではなく、イタリア国民の世論までも敵に回してしまうものでした。

2018年5月28日:セルジオ・マッタレッラ大統領は、国際通貨基金(IMF)元エコノミストのカルロ・コッタレッリ氏を次期首相に指名

セルジオ・マッタレッラ大統領は、ジュセッペ・コンテ氏に辞退されてしまったため、国際通貨基金(IMF)元エコノミストのカルロ・コッタレッリ氏を次期首相に指名しました。

セルジオ・マッタレッラ大統領は、中道左派出身で、カルロ・コッタレッリ氏も、財政再建などEU(欧州連合)との協調路線を踏襲する姿勢を取っています。

しかし、カルロ・コッタレッリ氏が新内閣を組閣したとしても、EU反対派の「五つ星運動」「同盟」の両党で両院の過半数に達するため、新内閣は新任されない可能性が高く、再選挙の可能性が高いと考えられています。

Bloombergによると

2018年5月28日:セルジオ・マッタレッラ大統領は、国際通貨基金(IMF)元エコノミストのカルロ・コッタレッリ氏を次期首相に指名
カルロ・コッタレッリ氏の閣僚人事案(組閣案)も、セルジオ・マッタレッラ大統領の同意を得られなかった。

とのことです。

2018年5月30日の執筆時点の今日、再度カルロ・コッタレッリ氏は、セルジオ・マッタレッラ大統領と会談し、合意が得られない場合は、大統領は議会を解散する形になり、60日~70日以内に再選挙となります。

合意が得られたとしても、結局、過半数を超えないため、信任されず、再選挙になる公算が高いのです。

再選挙になればどうなるのか?

セルジオ・マッタレッラ大統領の組閣案拒否は、法的な問題はありませんが、強引な手法であり、EU反対派の「五つ星運動」「同盟」の両党だけでなく、国民からの不信感も高まっています。

結果として、再選挙をすればポピュリズムの「五つ星運動」「同盟」の獲得票数が伸びる結果になると考えられています。

つまり、結果的に

イタリア総選挙による「反EU/反ユーロ連立政権」の誕生は揺るがない可能性が高いのです。

なぜ、イタリア総選挙による「反EU/反ユーロ連立政権」の誕生が「ユーロの全面安」につながるのか?

なぜ、イタリア総選挙による「反EU/反ユーロ連立政権」の誕生が「ユーロの全面安」につながるのか?

理由その1.イタリアの財政は、かなり危険な状況

EU:政府債務の残高の国内総生産(GDP)比ランキング

順位名称単位: %
1位ギリシャ181.91
2位イタリア131.45
3位ポルトガル125.62
4位ベルギー103.18
5位キプロス99.26
6位スペイン98.36
7位フランス96.96
8位イギリス87.03
9位オーストリア78.83
10位クロアチア78.41
11位スロベニア75.37
12位ハンガリー69.91
13位アイルランド68.52
14位ドイツ64.14
15位フィンランド61.37
16位オランダ56.66
17位マルタ52.62
18位ポーランド51.38
19位スロバキア50.43
20位スウェーデン40.94
イタリアの政府債務の残高は、国内総生産(GDP)比:130%

と、財政危機が問題化したギリシャに次いで悪い数字になっています。

政府が財政健全化に向かえばよいのですが・・・

今回の総選挙で勝利したのはポピュリズムの「五つ星運動」「同盟」です。

  • 大規模な所得税減税
  • 大規模な法人税減税
  • 失業者らへの最低所得保障
  • 年金支給年齢の引き上げ撤回
  • 不法移民の強制送還
  • EUの対ロシア制裁解除
    ・・・

のバラマキ政策を掲げているのです。

teacher

財政がひっ迫している状況で、大量の支出を伴う「バラマキ政策」を実行すれば、イタリアのデフォルトリスクは高くなるのは自明の理です。

当然、投資家はイタリアのデフォルトリスクを懸念しているので、イタリアの国債金利は急上昇しています。国債の売りが増え、買い手がいないからこそ、国債金利は上昇するのです。

イタリア10年もの国債金利
イタリア10年もの国債金利

理由その2.イタリアは、EU3番目の経済大国

2017年の名目GDPランキング

順位国名単位:百万US$
1位米国19,390,600
2位中国12,014,610
3位日本4,872,135
4位ドイツ3,684,816
5位イギリス2,624,529
6位インド2,611,012
7位フランス2,583,560
8位ブラジル2,054,969
9位イタリア1,937,894
10位カナダ1,652,412
11位韓国1,538,030
12位ロシア1,527,469
13位オーストラリア1,379,548
14位スペイン1,313,951
15位メキシコ1,149,236
16位インドネシア1,015,411
17位トルコ849,480
18位オランダ825,745
19位サウジアラビア683,827
20位スイス678,575

イタリアは財政危機が叫ばれているものの、経済規模で言えば「世界9位」です。

EU内で言えば、ドイツ、フランスに続く経済大国でもあるのです。

世界5位のイギリスに続き、世界9位のイタリアが、EU離脱をする

ということになれば・・・

man
「EUは機能していない。」
「EUの枠組みは破綻した。」
「今後も、離脱する国が増えてくる。」

と投資家が考えるのは当然です。

EUの通貨である「ユーロ」が売られてしまうのも、仕方がないことなのです。

今後のFX・為替相場予想

今後のFX・為替相場予想

現状のままであれば

カルロ・コッタレッリ氏の閣僚人事案(組閣案)をセルジオ・マッタレッラ大統領が承認しても・・・

  • 過半数を超える「五つ星運動」「同盟」の反対で「再選挙」

カルロ・コッタレッリ氏の閣僚人事案(組閣案)をセルジオ・マッタレッラ大統領が承認しなければ・・・

  • 議会解散で「再選挙」

で、イタリアの「再選挙」は、まのがれない状況です。

「再選挙」になれば

man
「民主主義で勝ち取った政党の組閣案が、大統領などのエリート層に都合が悪く拒否された。どっちに正義があるんだ。」

と、国民に優しいポピュリズムを掲げる「五つ星運動」「同盟」が訴え続けるのは間違えなく、かなりの確率で議席を伸ばすことが予想されます。

ということは

「再選挙」でも、現状の「ユーロの全面安」の状況がさらに加速する

ことが想定されます。

また、現時点でも、3月4日の総選挙から、政治の空白期間が続いているのにもかかわらず、さらに60日~70日後の再選挙までその状態が続く、というのであれば

  • 企業が投資を先送りする
  • 投資家が早めにユーロを見切る

などの悪影響も出てきます。

つまり、イタリアの総選挙の影響によって・・・

ユーロ安が続く公算が高い

と考えられます。逆にユーロ高になる材料がほとんどないため、ユーロの上値は重い状態が続くと考えられます。

さらにスぺインでも、内閣不信任案決議の採決が実施され総選挙になります。欧州各国でポピュリズムの政党が台頭し、反EUの流れが加速すれば、よりユーロ安が進む可能性が高いのです。

ソロス氏

米国のイラン核合意離脱や米欧間の同盟関係崩壊に言及し、こうした状況が欧州経済にマイナスの影響を与え、資金の流れがさらに変化する可能性を指摘。ドル高や新興国通貨売りがその前兆で新たな大規模金融危機に向かっているのかもしれない

とあるように、欧州経済はポピュリズムの代表格である米国のトランプ大統領の影響を色々な形で受けてしまい、EU(欧州連合)の枠組みの危機につながる可能性があります。欧州各国の状況には、引き続き注視しておく必要があるでしょう。

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おく先生

FX(海外FX中心)・バイナリーオプション・不動産投資など、投資歴10年、ほぼ投資だけでご飯を食べています。FXを中心として、様々な投資関連の情報を実際に実行しながら発信します。1000万円単位の失敗投資もたくさんしています。 FX資産額:3,000万円 保有不動産:2億円・7戸(戸建て中心) 借金:0円