「STP、DD、NDD、OTC、ECN・・・一体何のことだかさっぱりわからない。投資家が海外FX業者を選ぶ際にはどれを選べば良いの?メリットデメリットを教えてください。」
という質問を多くいただきます。今回は、海外FX業者の注文処理方法の違いと投資家におすすめの処理方法について解説します。
海外FX業者の注文処理方法の違い「DD方式か?「NDD」方式か?」
DD(ディーリング・デスク)方式
NDD(ノー・ディーリング・デスク)方式
DD(ディーリング・デスク)方式は「呑み取引」
DD(ディーリング・デスク)方式
= OTC取引(オーバー・ザ・カウンター)・相対取引・店頭取引
= MM取引(マーケットメイク)
とも、ほとんど同じ意味で使われます。
DD(ディーリング・デスク)方式で、注文を「仲介する人(ディーラー)」は何をしているのかというと・・・
- 注文を呑むか?呑まないか?を決定する
- 投資家同士の注文を相殺(マリー)する
- カバー取引の注文をインターバンク市場へ流す
・・・
ということをしています。
DD(ディーリング・デスク)方式で採用されているのは「OTC取引(オーバー・ザ・カウンター)」です。
OTC取引とは
を意味します。
OTC取引では
ということは
投資家が損する → FX業者が儲かる(投資家の損失分はそのままFX業者の利益になる。)
という「利益相反」の関係になるのです。
FX業者も、投資家の注文を100%呑んでしまうとリスクが高くなってしまうので、反対売買のカバー取引をインターバンク市場で行って、リスクを下げる動きをするのです。
- 運用成績の良い投資家の注文 → カバー取引でリスクヘッジをする
- 運用成績の悪い投資家の注文 → 呑み取引で利益を出す
- 投資家同士の注文 → 相殺させる
などの作業が必要になります。
これを実行しているのが、「仲介する人(ディーラー)」なのです。
インターバンク市場とは?
インターバンク市場というのは、銀行間取引市場のことを言います。参加している業者は、銀行だけでなく、FX業者や証券会社なども参加できる取引市場です。取引商品は外貨だけではなく、手形や短期資金なども取引されます。
インターバンク市場の取引価格は、一般の投資家には見ることができません。業者間の取引所だからです。
FX業者が提示している価格は、マーケットメイカー(値付け業者)と呼ばれる「インターバンク市場に参加している銀行」が提示した価格をもとに、FX業者が調整を入れて投資家に価格を提供しているのです。
同じマーケットメイカーを使っていても、FX業者によって提示価格が異なるのは、FX業者がマーケットメイカーの提示価格に対して、調整や上乗せ(マークアップ)をするからです。
OTC取引だから発生する「リクオート(約定拒否)」
OTC取引では、「仲介する人(ディーラー)」が投資家の注文を「カバーするのか?」「呑むのか?」判断します。ここにタイムラグがあり、カバー取引をするまでに為替レートが急変動してしまった場合、FX業者はリスクを回避するために「リクオート(約定拒否)」して、価格の再提示を行うのです。
投資家から見るDD(ディーリング・デスク)方式のメリット
スプレッドが狭い
国内FX業者のスプレッドが海外FX業者よりも狭い理由は、「DD(ディーリング・デスク)方式を採用しているから」に他なりません。
DD方式であれば、FXトレードの下手なカモが多ければ多いほど、FX業者は儲かります。しかも、注文すべてをインターバンク市場で売買しないで済むのです。
「マリー取引(相殺)」や「呑む」ことで、実際の通貨の売買が発生しないのですから、コストもあまり発生しません。
投資家から見るDD(ディーリング・デスク)方式のデメリット
約定拒否が発生する
「仲介する人(ディーラー)」が投資家の注文を「カバーするのか?」「呑むのか?」判断するタイムラグのせいで、「リクオート(約定拒否)」が発生します。
スリッページも発生しやすい
同じように「仲介する人(ディーラー)」が投資家の注文を「カバーするのか?」「呑むのか?」判断するタイムラグのせいで、スリッページも発生しやすいのです。
投資家のトレードシナリオが崩れやすい
注文しても、価格通りに約定できない。
「仲介する人(ディーラー)」の判断にトレードが左右されてしまうため、投資家が描いていたトレードシナリオが上手く回らないことが多いのです。
NDD(ノー・ディーリング・デスク)方式は「インターバンク直結」
NDD(ノー・ディーリング・デスク)方式は
プログラムを介して、投資家の注文を直接インターバンク市場に流すことを意味しています。だから「インターバンク直結」と表現されることが多いのです。公正な取引ができる取引方法と言えます。
NDD方式では、投資家の注文をインターバンク市場へ自動的に流すプログラムが走っているので、それだけだとFX業者の儲けがありません。
FX業者は
- スプレッドにマークアップ(上乗せ)する
- 外付けの取引手数料を取る
ことで利益を出すのです。
投資家から見るNDD(ノー・ディーリング・デスク)方式のメリット
約定力が高い
基本的にNDD(ノー・ディーリング・デスク)方式であれば、「リクオート(約定拒否)」が発生しません。スリッページは発生してしまう可能性はありますが、人力で対応するDD方式と比較すればスリッページも発生しにくいのです。
スリッページは発生しても、公正に発生する
人を介していないため、スリッページが発生したとしても、ポジティブな方向にも、ネガティブな方向にも、スリッページが公平に発生することになります。投資家の影響というのはプラスマイナスゼロに近くなります。AXIORYのスリッページのグラフを見ても、左右対称になっていることがわかります。
AXIORYの2018年1月のスリッページ発生のグラフ
投資家から見るNDD(ノー・ディーリング・デスク)方式のデメリット
スプレッド・取引手数料が割高になる
DD方式と違って、すべての注文を実際に売買することになるので、その分コストが発生します。
国内FX業者のスプレッドが原則固定0.3pipsに対して、海外FX業者のスプレッドが平均スプレッドで0.8~1.0pipsというのは、この取引方法の違いが大きく影響しているのです。
これがNDD方式の最大のデメリットと言えます。
海外FX業者の注文処理方法の違い「NDD方式は「STP」と「ECN」に分類される」
「STP(Straight Through Processing)」方式
「ECN(Electronic Communications Network)」方式
ECN取引では、参加する投資家同士が注文を出し合って、買いたい価格の注文と売りたい価格の注文がマッチしたときに売買が成立する仕組みとなっています。
個人投資家だけの電子取引所だと流動性が確保できなくなってしまうため、インターバンク市場の銀行や他のFX業者も、参加してもらって流動性を確保しています。
「ECN(Electronic Communications Network)」方式のメリット
板情報が見れる
ECNは、「誰がいくらで注文を出しているのか?」わかる取引方法です。そのため、板情報がトレードプラットフォームに表示されるため、どこの価格にどのくらいの注文が入っているのか?一目でわかる仕組みとなっています。
板情報という情報も、トレード材料として使えるメリットがあります。
スプレッドがほとんどゼロに近く、外付けの手数料なのでトレードコストも安定
STP方式の場合は、変動スプレッドを採用しているFX業者がほとんどで、指標発表時などのスプレッドは広がりやすい傾向にあります。ECN方式も、変動スプレッドなのですが、多くのFX業者が外付け手数料を採用しているため、指標発表時であってもスプレッドはそれほど変動せず、手数料も変動しないので、トレードコストが安定するメリットがあります。
「ECN(Electronic Communications Network)」方式のデメリット
流動性がないと注文がなかなか約定しない
投資家同士が注文を出し合って、買いたい価格の注文と売りたい価格の注文がマッチしたときに売買が成立する仕組みですので、参加する投資家が少なければ、流動性が確保できないのです。多くの電子取引所では、個人投資家だけでは流動性が確保できないため、インターバンク市場の銀行やFX業者を巻き込んで、電子取引所の流動性を確保しています。
海外FX業者の注文処理方法の違い「NDD方式は「Instant Execution」と「Market Execution」に分類される」
「Instant Execution」
STP方式を採用しているFX業者は「Instant Execution」を採用するケースが多いのです。
「Market Execution」
= DMA(Direct Market Access)、カウントダウン方式
ECN方式を採用しているFX業者は「Market Execution」を採用するケースが多いのです。
「Instant Execution」のデメリット
僅かに「リクオート(約定拒否)」が発生する
NDDといえども、一時的には投資家の注文を先に決済する(「呑む」必要がある)ため、ディーラーがいるDDほどではないもののカバー先への注文のタイムラグが発生してしまいます。タイムラグの間に相場が急変動してしまった場合には、「リクオート(約定拒否)」も発生してしまうのです。
AXIORYの2018年1月の約定拒否率
0.0840%の約定拒否が発生しています。
「Market Execution」のデメリット
いくらで約定するかわからない
「Market Execution」は、「リクオート(約定拒否)」はありませんが、約定した時点で価格が決定されるため、注文時点で見ている価格はあくまでも目安に過ぎないのです。スリッページも概念として存在しませんが、「注文価格」が目安に過ぎないので常にすべっているようなものです。
投資家は結局どの注文処理方法の業者を選ぶべきか?
「スプレッドの狭さ」を重視するのであれば「OTC取引(相対取引)」
スプレッドの狭さを気にするのであれば、国内FX業者が採用している「OTC取引(相対取引)」を選ぶべきです。海外FX業者が採用している「NDD取引」の場合は、どうしてもすべての注文を実行する必要があるため、スプレッドが広がってしまうのです。
「約定力」を重視するのであれば「NDD」が基本
海外FX業者を選ぶ時点で「スプレッドの狭さよりも約定力」ということを重視されているかと思いますが、約定力を重視するのであれば「仲介者(ディーラー)」を介さずに注文を処理してくれる「NDD」方式のFX業者を選ぶべきです。
狙った価格で約定されない。
となると、投資家のトレードシナリオが崩れてしまうので、「NDD」方式のFX業者をおすすめします。
スキャルピング、指標発表時などのトレードであれば「ECN(Market Execution)」がおすすめ
スキャルピングや指標発表時にトレードするなど、さらに「約定力」を重視したい方にはNDDの中でも「ECN(Market Execution)」がおすすめです。「ECN(Market Execution)」には約定拒否(リクオート)という概念がなく、必ず約定できるからです。
板情報を見たい場合も「ECN」がおすすめ
海外FX業者のECN口座を利用すれば「板情報」を見て、トレードをすることが可能です。「どの価格帯に、どのくらいの注文が入っているのか?」を知ることで、その情報を知らない投資家と比較すれば有利にトレードが可能になります。
まとめ
FX業者の注文処理方法には
- DD(OTC・相対・店頭):国内FX業者が採用
- NDD(STP・ECN):海外FX業者が採用
の大きく分けて2種類があります。
NDD方式の中には
- STP:Instant Execution
- STP:Market Execution
- ECN:Instant Execution
- ECN:Market Execution
の4種類があります。
海外FX業者の中では
- STP:Instant Execution
- ECN:Market Execution
が大きな選択肢となります。