FXの投資家であれば、一度は聞いたことがあるワード「ストップ狩り」ですが、そのメカニズムについて解説します。
「ストップ狩り」とは?
「ストップ狩り」とは
を言います。
例えば、OANDAのオープンオーダー・オープンポジションを見ると
4分割した左下のゾーンが「買い」ポジションを持った投資家の損切のための「ストップ注文(逆指値注文)」です。
- 113円の下
- 112円の上
に飛び出ている部分に「ストップ注文(逆指値注文)」が溜まっていると判断することができます。
多くの投資家はこのような形で「損小利大」を実現するために
という自分ルールを作って、トレードしている方が多いのです。
同じタイミングでチャートを見ると
- 現在のトレンドの前の高値:112.890
- 現在のトレンドの前の安値:112.552
ですから、この近辺で「ストップ注文(逆指値注文)」を入れている投資家が多いことがわかります。
仮に一時的に為替レートが112.500まで下がったとしたら
現在のトレンドの前の高値:112.890で「ストップ注文」を入れていた投資家も、
現在のトレンドの前の安値:112.552で「ストップ注文」を入れていた投資家も、
損切が発動して「負ける」ことになります。
このレート操作を意図的に実行するのが「ストップ狩り」なのです。
- ヘッジファンドなど巨額の資金がある投資家(機関投資家)
- 国内FX業者
の2種類です。
もともと、「ストップ狩り」というのは、ヘッジファンドなどの投機筋が利用する投資手法のことで、巨額の資金があれば、ある程度は為替レートを動かすことができます。
- 大量の売り注文を入れる
- 大量の買い注文を入れる
だけで、為替レートは動きます。
大量の売り注文を入れれば、為替レートは下がります。
為替レートが下がって、先ほどの「ストップ注文」が溜まった価格帯を割れば、さらに「ストップ注文」の「売り」が入ることになり、為替レートが下がり、「大量の売りポジションを持つ、ヘッジファンドは儲かる」ということになるのです。急激な為替レートの下降は、さらに投資家の不安をあおり、より為替レートが下がります。この間にヘッジファンドは利確して、利益を上げるのです。
今回テーマにするのは後者の「FX業者が行うストップ狩り」です。
ヘッジファンドの「ストップ狩り」は、違法なことをしているわけではありません。通常の売買の中で、資金力がある投資家が選択する当たり前の行動と言って良いでしょう。
たちが悪いのは「国内FX業者が行うストップ狩り」なのです。
国内FX業者は、なぜ「ストップ狩り」を行うのか?
国内FX業者が採用しているのは
と呼ばれるものです。
カジノやギャンブルのディーラー(親)とギャンブル参加者(子)の関係に近いもので
- ギャンブル参加者(子)が負けて賭けたお金を失う → ディーラー(親)にお金が入る
- ギャンブル参加者(子)が勝って払い戻しのお金をもらう → ディーラー(親)がお金を失う
という関係にあります
国内FX業者の場合は、多くの業者が「OTC取引」を採用しているため
- FXの投資家が損をすればするほど → 国内FX業者は儲かる
- FXの投資家が儲ければ儲けるほど → 国内FX業者は損をする
という関係になるのです。
国内FX業者の場合は、かなりあからさまで
- FXトレードが下手な投資家の取引 → 国内FX業者が「呑む」(≒投資家が負ける確率が高いので儲かる確率が高い)
- FXトレードが上手な投資家の取引 → 国内FX業者は「カバー先に流す」(≒投資家が勝つ確率が高いので、カバー先に流して相殺する)
という操作をしています。
投資家のFXトレードの勝率をシステムを使って見ながら
- 「呑む」(≒カバー先に流さない)
- 「カバー先に流す」
のかを判断しているのです。
国内FX業者は
「下手なカモの投資家、初心者投資家大歓迎」
と、口では言いませんが、このような感情で顧客獲得を優先しています。
のですから、
「すぐに元の為替レートに戻せば投資家は気が付かないだろう。」
と考える国内FX業者もあり、これが「国内FX業者が行うストップ狩り」につながってしまうのです。
前述した例でも、国内FX業者が一瞬でも、112.890を割る方向に為替レートを動かせば・・・
112.890の価格帯でストップ注文を入れていた投資家のポジションは一気に失われ、多くの投資家の損失が確定します。
多くの投資家の損失は、国内FX業者の利益となるのです。
これが国内FX業者が行う「ストップ狩り」の中身なのです。
本当に国内FX業者が行う「ストップ狩り」なんてあるの?
基本的には
国内FX業者が提供しているトレードプラットフォームの中に操作ができるシステムが組み込まれていて、為替レートをずらすことができるのですが、投資家がその中身を見ることはできないので、ほぼブラックボックスになってしまうのです。
そのため、都市伝説のように「ストップ狩り」のうわさが独り歩きしているということになります。
直近の事例では
2016年3月17日:楽天FX
という事件が発生しました。
公表されている楽天FXの原則固定スプレッドは
米ドル/円:0.3pips
です。
BIDチャート
ASKチャート
ですから、「買いポジション」の投資かも、「売りポジション」の投資かも、ストップ注文が狩られたことになってしまいます。
twitterでも、投資家のツイートで多くのマイナスコメントが発生しています。
楽天の皆殺しFX
0:18 – 2016年3月18日楽天何これ?詐欺やろw
21:26 – 2016年3月17日垂直にヒビw
21:41 – 2016年3月17日楽天FXは、ドル円の売り方も殺した臭い
21:07 – 2016年3月17日つうことは表示が カイ103 ウリ118 って板が出てたのけ? スプレッド15円かw やるな楽天www 東証プロ市場の板みたいやなw
21:47 – 2016年3月17日楽天やばい。。詐欺かよ(;一_一)
21:55 – 2016年3月17日誤配信したレートによる約定はもちろん取り消されるんだよね?
22:37 – 2016年3月17日楽天はどういう問題でここまでやらかすんだろ。システム的に致命的な欠陥抱えてるけど放置してるのかな。
22:36 – 2016年3月17日楽天FXって、元々はスイスフランショックで飛んでしまったFXCMですからね。
21:43 – 2016年3月17日
結果として多くの投資家が残高がマイナスになり、「追証」の対象になってしまいました。
楽天証券では
本日20時40分ころ、当社楽天FX取引において誤ったレートが配信されました。現在当社では、正常なレートに基づいてお客様の修正作業を進めております。お客様にご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
とすぐにシステムエラーという形で対応が行われました。
この誤配信が「ストップ狩り」であったとしても、ここまで派手に動かすことはありませんので、ミスやエラーであることは間違えありませんが
ということの証左でもあるのです。
これが0.3pipsが1500pipsだから、わかるものの、0.3pipsが一時的に1.3pipsになったとしても、大多数の投資家は気付かないのです。
「ストップ狩り」は、国内FX業者が意図的に配信レートを動かせるために、気付かれない幅で行われているものなのです。
「ストップ狩り」を回避するための対策
対策その1.海外FX業者を利用する
前述した通りで
国内FX業者は
- FXの投資家が損をすればするほど → 国内FX業者は儲かる
- FXの投資家が儲ければ儲けるほど → 国内FX業者は損をする
という仕組みです。
投資家とFX業者の利益相反が起きているために「ストップ狩り」が発生してしまうのです。
海外FX業者は
NDD取引(ノン・ディーリング・デスク)
仲介者不在の取引方法を採用しています。
投資家の注文は、そのままリクイディティ・プロバイダーへ仲介者不在で流されるのです。
海外FX業者は、取引量に対する手数料でのみ収益を上げているのです。
- FXの投資家が取引量を増やせば増やすほど → 海外FX業者は儲かる
- FXの投資家が取引量が減れば減るほど → 海外FX業者は損をする
という関係にあります。
当然、投資家は儲けられなければ、取引量を増やすことはできないため、海外FX業者は、投資家が儲かるようなサポートをしてくれるのです。
そもそも、「ストップ狩り」をして、投資家を負けさせる理由がないのです。
対策その2.ストップ注文の幅を広げる
前述した楽天FXのように目立つやり方の「ストップ狩り」は、ほとんどありません。
「目立たない幅でしかできない悪質な行為」と言っても良いでしょう。
そのため、ストップ注文を広く取っておけば「ストップ狩り」が発動したとしても、そこでロスカットに引っかからずに済むのです。
対策その3.ストップ注文が溜まっている価格帯を避ける
ストップ注文というのは、
- キリのいい数字(ラウンドナンバー)
- 直近の高値
- 直近の安値
に溜まりやすいのです。
同じところにストップ注文を入れてしまうと、そこが狙い撃ちされてしまって「ストップ狩り」に巻き込まれてしまいます。
対策その4.不信な価格変動があった時に他のFX業者のチャートと比較する
「ストップ狩り」は一瞬のできごとですので
- 1分足でヒゲが伸びる
ことになります。
- 「買い」ポジションの「ストップ注文」を狩ろうと思えば「下ヒゲが伸びたローソク足」ができる
- 「売り」ポジションの「ストップ注文」を狩ろうと思えば「上ヒゲが伸びたローソク足」ができる
ことになります。
この現象が配信元の取引レートが急変動しただけという可能性もあるため、
この時点で他のFX業者の1分足の為替レートを比較してみれば良いのです。
- 他のFX業者の1分足には下ヒゲがあまり出ていない
- 利用中のFX業者の1分足には下ヒゲが出ている
というのであれば「ストップ狩り」の可能性が高いと判断できます。
対策その5.「ストップ注文」を入れない
これが一番わかりやすい対策かもしれません。
「ストップ注文」は、「損小利大」を目指すのであれば、重要な注文方法の一つですが、PCに張り付いてトレードできる方であれば、アナログ判断で損切りしても、大きくはずれないはずです。
まとめ
「ストップ狩り」とは
- 投資家がポジションを持つ時に設定している「ストップ注文(逆指値注文)」を、レートを一時的に動かすことで意図的に損切させること
を言います。
「ストップ狩り」には
- ヘッジファンドが行う「ストップ狩り」
- FX業者が行う「ストップ狩り」
があります。
国内FX業者は、投資家の損失がFX業者の利益になる「利益相反」の関係になっているため、意図的に投資家に損をさせるべく「ストップ狩り」を行うのです。
「ストップ狩り」を回避するための対策には
- 対策その1.海外FX業者を利用する
- 対策その2.ストップ注文の幅を広げる
- 対策その3.ストップ注文が溜まっている価格帯を避ける
- 対策その4.不信な価格変動があった時に他のFX業者のチャートと比較する
- 対策その5.「ストップ注文」を入れない
というものがあり、NDD取引の海外FX業者を利用する方法をおすすめします。
投資家とFX業者が「利益相反」の関係になると「ストップ狩り」以外にも、不具合が出てきます。FX業者は「投資家負けてほしい」と思っているのですから、健全なパートナー関係ではありません。NDD取引の海外FX業者であれば、「投資家に儲けたもらいたい。」というパートナー関係が築けるので、いろいろなフォローを受けられるのです。
「ストップ狩り」のリスクを回避したい方は、NDD取引の海外FX業者を検討してみましょう。
「ストップ狩りって、本当にあるの?」
「ストップ狩りって、どうやって起こるの?」
・・・